にんにくの効果・効能
風邪
古くからにんにくには風邪を治す効果があると考えられ、さまざまな民間療法や健康法が試されてきました。現代科学では、にんにくの風邪に対する効果を動物実験とヒト試験によって確認しています。
一口ににんにくと言っても、無傷のにんにくはにおいがなくて、切るとにおいが出てくるように、調理の仕方によって摂り入れる成分が違ってきます。当然、効果も違ってくるので、こちらでは、にんにく成分が風邪に対して働くメカニズムと、どのような方法で摂り入れるのが最も効果的なのかを解説します。
「風邪」とはどんな病気なの?
一般的に「風邪をひいた」という状態は、咳・くしゃみ、鼻づまり、喉の痛み、寒気に始まる発熱などの異常を感じることです。これらの異常は、実は“風邪ウイルス”という微生物が気道の細胞などに感染することによって起きるもので、「かぜ症候群」として扱われています。風邪ウイルスには、ライノウイルス、コロナウイルスなど、その種類は200を超えると言われています。ウイルスの種類によって感染する部位や炎症が起こる部位が異なるために、咳や鼻水・喉の痛みなど、風邪にはさまざまな症状があるのです。
ウイルスは、風邪をひいた人のくしゃみなどによって飛散し、気道の粘膜に付着・増殖して感染しますが、発症するかどうかは感染した人の体調などに左右されます。この体調は、“免疫力”と言い換えることができ、その力が落ちていると発症し、その範囲が全身にまで及んで、肺炎など深刻な症状につながる場合もあるのです。
「風邪は万病のもと」と言われるように、体力の低下を招き、他のいろいろな病気に陥れる可能性が高くなるため、決して軽視できない病気です。
「かぜ症候群」のうち、インフルエンザウイルスによる場合は、咳に加えて38℃以上の発熱、頭痛、関節痛などの症状が急速に現れ、重症化するため、そのウイルスに対抗するワクチンが作られ、投与されるのです。それ以外の一般の風邪には、ウイルスが多すぎて対応するワクチンを作ることが難しいのです。
風邪対策に、にんにくは効果的!
風邪対策としては、風邪のウイルスに触れないことが一番ですが(事実、南極ではウイルスがいないので風邪はひかないとのこと)、通常の社会生活では避けようもなく、誰もが感染の危機にさらされているといっても過言ではありません。ウイルスが気道から入って、細胞を壊してしまうと炎症をおこして感染を知ることになりますが、ほとんどの場合は、その前に免疫抗体という防衛成分(たんぱく質)によって捕らえられ、分解除去されてしまうのです。このことから、感染してしまうということは、その抗体がないか、あっても弱いと考えられます。
風邪でもインフルエンザでも、かかってしまうと治るまでに時間がかかります。
それは、ウイルスを退治するための免疫抗体を体内で作るのに時間がかかるためです。抗体は、ウイルスの構造を一部写し取って、その構造にぴったりと合うように免疫細胞が作り出す特別なたんぱく質です。このような抗体によって捕らえられたウイルスは食細胞の餌となって分解除去されるのです。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、にんにくは次のような働きを通じて風邪を防ぎ、また治すのです。
にんにくがもたらす効果
風邪の予防
血流増加、体温上昇作用を通じて身体の免疫細胞の動きをよくするため、体力を増強し、風邪にかかりにくい身体を作ります。
関与成分として、においの素、アリインが挙げられます。アリインには、体温を上昇させたり交感神経を刺激するホルモン分泌を促したりする作用があります。
また、食品加工会社によるヒト試験において、気管や食道粘膜に多く含まれる免疫グロブリンのひとつIgAの分泌を有意に高めることが確認されています。
したがって、にんにくの成分が風邪ウイルスを寄せ付けないように働くものと考えています。
さらに、アリインからアリシンを経てつくり出されるにおいの成分スルフィド類のMATS(メチルアリルトリスルフィド)やDATS(ジアリルトリスルフィド)は、血流をよくして免疫機能を高める作用があります。
風邪の早期治癒
にんにくは免疫細胞を刺激して免疫抗体の生産を促すため、風邪を早く治す効果があります。このような免疫作用を強めるにんにくの成分は多数存在することが確認されています。
一例として、アリインやγ-グルタミル-S-アリルシステイン(GSAC)などのにおいの素の成分を含むにんにくサプリメントをはじめ、においとは無関係の糖たんぱく質レクチン、可溶性食物繊維のフルクタンなどに存在していることが挙げられます。
不眠改善
風邪の予防と早期治療を合わせた効果を強めるように、にんにくを使った料理は食欲を増し、栄養摂取量を増やし、また不眠改善効果を発揮します。この不眠改善効果は、にんにくサプリメントを使ったヒト試験でも確認されています。
このように、にんにくおよびその加工製品は栄養バランスを保ち、十分な睡眠をとることで免疫力が高められて、風邪を跳ね返すのです。
にんにくの摂り方(食べ方)
にんにくには免疫力をアップさせる働きがあり、風邪による炎症を抑え、痛みを軽減するなど風邪を早く治す効果が期待できます。
生のにんにくには、アリインやGSACが含まれていて、刻んだり、すりおろしたりすることで独特なにおいのアリシンが発生します。しかし、この状態では刺激が強くそのままでは摂りづらいでしょう。
そこで、オススメなのがオリーブオイルなどの食用油。にんにくは食用油と混ざることで刺激性が抑えられ、さらにスルフィド類に変化し、風邪の炎症を抑える効果を発揮するようになります。
また、にんにくは煮たり焼いたりすることで、成分をより摂りやすくなります。
その過程でS-アリルシステイン(SAC)やアホエンなどの成分が生まれ、免疫の増強・炎症の抑制作用が期待できるようになり、風邪にかかりにくい、または早く治すことができるのです。
このようなにんにくの成分と調理との関係および風邪対策への貢献について、下記で解説します。
生 | きざむ・すりおろす | 加熱・漬け物など |
---|---|---|
GSAC アリイン | GSAC アリシン | GSAC スルフィド類 SAC アホエン |
刺激が強く そのまま摂ることが難しい | 刺激性が無くなり 食べやすくなる |
にんにくの成分・栄養素
にんにく料理のコツ
ワンポイントコラム
1944年にアメリカの科学者カバリトによって、にんにくには最初からにおいを発する刺激成分は含まれておらず、にんにくを傷つけることで、安定な(刺激のない)化合物アリインが分解を受けて不安定な(刺激の強い)硫黄化合物アリシンを生じることが明らかにされました。1951年には英国の科学者ストールとシーベックによって、アリシンからにんにく特有のにおい成分である硫化アリル化合物、この中にはジアリルジスルフィド(DADS)やジアリルトリスルフィド(DATS)が含まれることなどが明らかにされました。それ以降、にんにくの加工方法の中から、S-アリルシステイン(SAC)、 メチルアリルトリスルフィド(MATS)、アホエンなどの機能成分が分離されてきたのです。
にんにくを食べるときに気をつけたいこと
風邪薬とにんにくを同時に摂取すると、胃壁などに負担がかかってしまい、胃痛などを起こす原因となってしまいます。加熱したにんにくでも刺激は残っていますので、風邪薬を飲んだ後は、しばらく時間を置いてからにんにくを食べるようにしましょう。
なお、抗生物質は風邪には無力ですが、ウイルスによる炎症が細菌の活動を招いて、痛みが強く症状が悪化する場合には有効で、処方されます。
風邪の予防や改善に、にんにくを活用しよう!
にんにくは風邪に対して、「予防」と「改善(治療)」のどちらからも効果が期待できる食材です。
風邪をひいて体調を崩してしまったとき、風邪薬を服用するという人は多いと思います。確かに、風邪の症状を緩和させる効果が期待できるので、状況に応じて活用することもオススメです。
ふだんの食生活ににんにくを上手に摂り入れて、風邪のウイルスに負けない体づくりをしておきましょう。
(監修:医学博士 有賀豊彦)
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